ほとんどの病院で処方される薬の飲み方の欄には「朝食後」や「毎食後」などと書かれています。しかし、日本人はこれを守ろうとする意識が強すぎて、良くありません。食後でなければダメな薬はほとんどありません。「食後」を守るのではなく、「飲む回数」を守ってください。空腹でも構いません。

①「1日3回毎食後と書いてあるが、1日に2回しか食事をしないので2回しか飲んでいません。」という患者さんがものすごく多いです。1日3回飲む薬というのは1回飲んでも体内で作用する時間が短いために1日に3回飲まないと1日中薬が効き続けることができないわけです。なのに1日に2回か、ひどい場合は1回しか飲まなければ、薬の種類によっては大変なことが起こります。例えば細菌感染を治療する抗生物質は決まった回数を必ず飲まないといけません。3回飲まないといけないところを2回しか飲まないと、最悪の場合には菌が薬よりも強い菌に生まれ変わってしまい、その薬を3回飲んでも消えなくなってしまいます。これを「耐性菌」と言います。飲む回数を守らなければ耐性菌ができてしまうリスクが上昇します。心臓の薬なども決まった回数を飲まないと心臓に余計な負担がかかることがあります。薬は空腹時でもいいので必ず飲むようにしてください。「胃があれる」というのもほとんどそんなことは起こらないと思って構いません。薬を飲んだら胃があれるというのは世界的には標準の考え方ではありません。

②「薬を飲まないといけないから無理して食事しました。それから薬を飲みました。」という患者さんもかなりおられます。前述の理由と同様、ほとんどの薬は空腹時でも問題ありません。無理に食事をとることで病状によっては悪化してしまうことがあります。食べれないときは医師に相談の上で薬だけ内服しておくようにしてください。特に胃腸炎や腸炎など食事を摂らない方がいい場合もたくさんあります。入院中は絶食となることも多々ありますが、それでも薬だけは時間が来たら飲むように指導されます。

薬は飲むタイミングを守るよりも、飲む回数を守る方が圧倒的に大事です。

上嶋内科・消化器科クリニック